首都高速環状線 ~C1の愛~
ニューヨーク発 アンカレッヂ経由 成田着16:35
太平洋上空から高度を下げ やがて雲の切れ間から
夕日に照らし出された街並みを望む
その飛行機は定刻を2時間遅れの JAL005便
君が待っているはずの日本へ 僕は久し振りに舞い降りた
あれは君と付き合い始めて三年目の春
突然僕に下ったアメリカへの転勤命令
一年後 僕が帰国した時 ふたりの心が変わらなければ
結婚しようと誓い合った
そして僕は渡米 互いの真実の愛を確めるため
メールや電話は一切しない約束 孤独と誘惑に耐え
僕はひたすら仕事に打ち込んだ
長かった一年の歳月を経て 今日がその約束の日
成田発21:00 新宿行きの高速リムジンバスに乗り換え
夜のハイウェイを西へ
見覚えのある夜の街並みが車窓を飛び交う
君ははたして覚えているだろうか
一年前のとりとめもなく交わした約束を
それは変わらずに僕のことを想っていてくれたら
首都高速都心環状線のどこかで僕に合図を送るというもの
やがて街の明かりがひと際賑やかになり
僕を乗せたバスは湾岸線から首都高へと入る
僕の心臓は次第に高鳴り 今にも張り裂けそう
出発の日 空港で見送ってくれた君の面影が頭をよぎる
そして国内線の飛行機の瞬くランプが上空を行き交う中
街のネオン煌くレインボーブリッジを渡り進路を環状線に取る
22:00を過ぎた首都高速は昼間の渋滞がまるで嘘のよう
やがて東京タワーを周りこむように連続する右カーブ
そして前方に現れた巨大ビル群
しかし一向に君からのサインはなく まもなくC4の分岐点
もうあと数分で 環状線から新宿線へと入ってしまう
それがタイムリミット そしてラストチャンス
谷町ICを抜け 霞ヶ関出口の先で最後のトンネルに入った
募る不安 やはり一年間の空白はふたりには長すぎたのか
やがて国会議事堂付近で地上に出た瞬間
半ば諦めかけていた僕の目に 一筋の明かりが飛び込んだ
それは紛れもなく君からのサイン
首都高を見下ろす陸橋の上から
君が夢中で描いた I love you の光る文字
それを見届けた僕は体中が震え シートに深くもたれ
高鳴る鼓動を抑えるために 大きく深呼吸した
君はずっと僕を待ち続けていてくれた ずっと変わらぬ心で
その後夜行バスはそのまま左へカーブしC4標示へと入った
すっかり安堵した僕は はやる気持ちを抑えつつ
新宿ターミナル西口へ降り立った
君の到着を待つ間 僕は君のためにある仕掛けを用意した
一時間後 息を切らし南口改札から出てきた君を
僕は人目を気にすることなく力いっぱい抱きしめた
心なしか大人になった君にまた逢えた嬉しさで涙が溢れた
すると次の瞬間 駅前のオーロラビジョンにふたりの姿が
大きく映し出された
その一帯は たちまち人だかりができ 周りは拍手の渦
そして僕は大勢の証人の前で 君にプロポーズした
ちょうどその時 時計の針が午前零時を指し示した
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