私大入試ランキング今昔物語
昨日までのブログを見て頂くとわかるように、私は今年、期するものがあって23年ぶりに再び学生の身になった。しかも全くの専門外の法律を学んでいる。私の高校時代は、今で言う「ゆとり」ではないし、もちろん「学校週5日制」などはなく、受験戦争と呼ばれた過当競争の時代だった。いわゆる学歴偏重の歪んだ社会情勢の中にあった。
一流企業へ就職したければ、文系学部であれば早稲田・上智・慶応などを筆頭に、今で言うところのMARCH(マーチ)クラス=明治・青学・立教・中央・法政、つまり偏差値で言うと60以上の大学でなければ、相手にされなかった。
現に、私の大学時代の経済学部に在籍していた友人は、就職活動の際、屈辱的な差別を受けて愕然とした。それは7月に入って就職が解禁となり、或る一流商社に会社説明会の日程を尋ねる確認の電話をした。ところが、人事部の担当者は大学名を聞くなり、「まだやっていない」と冷たい感じの応対で、電話を一方的に切られたそうだ。時期的にも既に始まっていたため、妙に思い、試しに同じ友人が大学名を超一流のW大と偽って確認の電話を入れたところ、具体的な日にちを指定してきたという。これほど大企業の応対は横着で露骨なものがあった。
今は、大学を取り巻く環境は少子化の影響で、昔とは信じられないような変わりようだ。経済的理由によって、国公立大学に人気が集中し、一方で偏差値が40以下の私立大学が溢れ、その手の大学では定員割れを起こし、苦し紛れに編み出したAO入試や推薦枠を大幅に広げるなど、あの手この手で学生集めに必死らしい。
また、専門学校では、選考料免除や授業料半額、入学金半額など、ニンジンをぶら下げ、まるで閉店間際のデパートのように大盤振る舞い状態である。こうなることはわかっていたのに、どこの私立大学も短大・専修学校も、学科を増設したり、薬剤師が人気となれば、それに便乗して大学を次々新設したし、心理学や看護医療系が引く手あまたとなれば、その学科の定員を増やし、学生獲得に躍起になるなどしていた訳だが、今になってそのツケが回ってきたように思える。現在、薬学部は6年制に変わった。その途端、入学志願者が激減した。この近くで言えば、東北薬科大だが、4年制の頃は駆け込み需要もあって偏差値は60以上あった。6年制になった途端、学費は通常の1.5倍。難易度は急落し、偏差値は一気に40台にまで下がった。埼玉とか千葉に出来た新設の薬科大学は卒業するまで2千万円近い出費を払わされるらしい。こうなると我が家を売らないと学費を工面できないだろう。とてもじゃないがそんな大学への進学は不可能に近い。
また、一方では学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金は予約が殺到し、パンク状態だという。こうなると経済困難で、とても薬学部志望とは口にするのもおこがましくなる。私立薬学の偏差値は大部分が40を切っている。仮にも医歯薬学系の一角を担う命に関わる職業を養成する学部が40以下って・・・。それではそこへ入学して勉強する学生の質も低下することは必然で、難関として知られる薬剤師の国家試験をパスできる筈もなく、万が一合格したとしても薬の処方を間違えられそうで怖い。
ところで私が22年前に卒業した私立大学(教養課程は北海道で専門課程は東京にあった)は、文系の学部だったのだが、偏差値は55程度だった。それが10年ほど前には、渋谷から3つ目の駅という立地条件が人気を博し、60前後にまで跳ね上がった。それが今、駅の書店で立ち読みした受験雑誌(蛍雪時代)によると、今年の河合塾ランキングでは、遂に50にまで急落した。私としては苦労して入った大学なのに、もはや「ここまで落ちたか」と落胆せざるを得ない現状に目を覆うばかりだ。
昨今、授業料等が比較的安い国公立大学の人気は異常なまでのうなぎ上りであり、センター試験を受験し、5教科6科目や7科目と言った数多くの科目を勉強し、総合得点で合否を決定するため、幅広い教養を身につけた知識人が学生としている以上、企業としても3教科に特化した学生よりも重用したくなる気持ちもわからずもない。
私がもし、企業の人事担当だったら、同じだろう。是が非でも国公立大出身の学生を採用したい。それと大学では理系離れが深刻化しているようだ。テレビの分かり易いニュース解説でお馴染みの池上彰氏のテレビ番組で取り上げたが、理系の志願者が減ると、日本の産業を下支えしている技術者の研究レベルが下がり、元々日本のお家芸だったハイテク産業&最先端科学、詳述すれば半導体やナノレベル単位での技術革新や製品開発が立ちゆかなくなる懸念が強くあるようだ。
また、特に志願者の落ち込みが顕著だったのが、女子大である。かつて名門といわれた東京女子大学や日本女子大学ですらガタ落ち傾向。お嬢様学校として名を馳せた聖心女子大・清泉女子大・フェリス女学院大も昔の面影はない。更に良妻賢母をスクールカラーとし、コンパでは大モテだった大妻女子大・実践女子大・共立女子大・昭和女子大もまた偏差値で言うと50を下回ってしまった。
女子大に限らず、中堅校と言われた日東駒専(日本・東洋・駒澤・専修)や大東亜帝国(大東文化・東海・亜細亜・帝京・国士舘)までもが50前後、あるいはそれ以下になってしまった。学費が高すぎる私立大学は、軒並み受験者数が減り、大学側からすれば、生き残りをかけて血眼の形相で学生集めに奔走している現状が窺い知れよう。首都圏でさえこうなのだから、地方の名もない大学は潰れるのを指をくわえて待つばかりか・・・。
そして、就職難が続く短大は、食物栄養や幼児教育系、介護を除いては概ね不人気で、四大との統合を含めて募集停止に踏み切る動きも見られるという。求人状況を考えてみれば、かつて高卒者が行っていた仕事を短大・専門学校卒が行い、短大卒が行っていた職務を大学卒者が担当している現状が全てを物語っていよう。以上見てきたように受験地図も大分様変わりしたようだ。ではどれくらい変わったのか、25年前と現在の状況を私立大学の文系学部のランキング表で比較してみたい。
1985年の私大ランキング(文系) ~首都圏・東北地区~
SS70 以上 早稲田大学・慶應義塾大学
SS65~69 上智大学・国際基督教大学・立教大学・津田塾大学
SS60~64 青山学院大学・学習院大学・明治大学・中央大学・
東京女子大学・日本女子大学・法政大学
SS57~59 明治学院大学・國學院大学・成城大学・成蹊大学
神奈川大学・武蔵大学・二松学舎大学・フェリス女学院大学
白百合女子大学・聖心女子大学・清泉女子大学・獨協大学
SS53~56 日本大学・専修大学・東洋大学・駒澤大学・東京経済大学
玉川大学・創価大学・文教大学・日本社会事業大学
SS50~52 東北学院大学・東海大学・大東文化大学・亜細亜大学・
桜美林大学・大妻女子大学・共立女子大学
SS46~49 関東学院大学・国士舘大学・拓殖大学・大正大学・東京国際大学
実践女子大学・武蔵野女子大学・東北福祉大学・立正大学・
千葉商科大学・亜細亜大学
2010年の私大ランキング(文系) ~首都圏・東北地区~
SS70以上 慶應義塾大学・早稲田大学
SS65~69 上智大学
SS60~64 青山学院大学・明治大学・立教大学・中央大学・学習院大学
SS57~59 獨協大学・文教大学・法政大学・武蔵野大学・津田塾大学・
明治学院大学・國學院大學
SS53~56 成蹊大学・成城大学・武蔵大学・國學院大学・聖心女子大学
SS50~52 日本大学・専修大学・駒澤大学・東洋大学・神田外語大学
・産業能率大学
SS46~49 フェリス女学院大学・清泉女子大学・白百合女子大学・
創価大学・神奈川大学・昭和女子大学・東京経済大学・
麗澤大学・亜細亜大学・東京経済大学
SS45以下 大妻女子大学・共立女子大学・桜美林大学・帝京大学
拓殖大学・玉川大学・東北学院大学・立正大学・実践女子大学
大東文化大学・関東学院大学・東海大学 その他多数の大学
資料= http://1st.geocities.jp/gakurekidata7/s1983.html
注) このランキング表は、理系学部は除いてあるし、学部学科によって差異は生じる。例えば中央大学と法政大学は、法学部が他学部より圧倒的に難易度が高い。大学の看板学部と呼ばれるのがそれである。基本的に法学部や文学部、社会学部系は人気が高く、工学部系は偏差値が劣る傾向がある。これは工学部は、機械・土木・電気などどちらかと言えば男子専門のような科目設定であり、学問の中で最も難解とされる数Ⅲや物理を必須としていることから、建築や化学分野を除いて女子が敬遠する傾向は顕著。したがって志願者数の大多数が男子に限られ、倍率が低いことが最大の理由。
文学部は、国文・英文・外国語などの語学系を始め、歴史系、心理学系など女子に大人気の学科ばかり。だから男女を問わず受験者が殺到し、「高倍率=高偏差値」となるようだ。例えば国立大学の新潟大学は、人文学部が54だが、工学部は48と偏差値が6も低く入りやすい。そして最大の注目すべき点は、上の表の通り、下に行くにしたがって女子大が目立って多くなっていること。いかに女子大の人気が急落したのが見て取れよう。あの横浜・山の手の一等地に聳えるお嬢様学校の「フェリス」ですら偏差値50を割っている現状なのだ。女子大が人気がない真の理由は定かではないが、男女共学が一般化したことや、都会での薔薇色の女子大生生活にあって、キャンパス内は女だらけでは出会いも少なくなり、つまらないと考え敬遠するのではないか?
そしてSSが50以上を見ると、首都圏・東北圏の大学で言えば、数えるほどしかなくなったのが実によくわかる。一時期、ゆとり教育が流行った頃は、大学を偏差値で考えるのはナンセンスで、個性重視の教育にシフトした結果、競争力を失い、のんびりした情勢となり、結果みるみる学力が低下した。国際的な指針で調査統計している「リテラシー(識字率)」でも1位から転落し、10位以下まで下げた。常識の通用しない大人が増えたのも、ひょっとするとそのへんが関係しているのかも知れない。大学は今、死活問題で、学生集めに相当苦慮している。今は各大学共にアドミッションポリシーを掲げ、理想とする学生像を提示し、6月頃のAO入試を皮切りに、指定校推薦・公募制推薦・一般入試・センター利用入試というように何度も入試を行い、学生に受験機会を与え、媚を売っている。偏差値が40以下の大学は、願書を出せば先着順で決まっていくようだ。偏差値が低い大学ほど定員割れになるケースが顕著である。いつから大学がこんなに廃れてしまったのか極めて遺憾に思う。
さて、最後に言いたいことは、最近、「平成教育学院」や「Qさま!」などのように、インテリ芸能人特集やアナウンサー対決、東大VS京大スペシャル、インテリ美女対決などと銘打ったクイズ番組がわんさかである。モデル兼タレントの優木まおみは東京学芸大学卒とか、真鍋かをりは横浜国立大学を卒業しているとか聞くとドキッとする。また、あの光浦靖子だって東京外国語大学、皆藤愛子(愛ちゃん)も早稲田大学を卒業しているエリートなのだ。私の大好きなお天気お姉さんの長野美郷は上智大学だし、フジテレビの女性アナの大部分は慶應義塾大学卒で、呆気にとられるほどの高学歴である。頭がいいから色々な分野で臨機応変に機転を利かせて対応できるのだろう。
会社でリストラにあった時に、窮地を救う手立てになるのは、自分が何をして来た人間で、その会社や社会にどのように貢献できる人間かをアピールできるかである。そのために「ハケンの品格」の大前ハル子ではないが、必要な資格を数多く取得していることも強力な武器になる。また、今の世の中、英語を話せないと使い物にならないようだ。
昨日のニュースで、社内の会話はすべて英語を用いて行うという画期的な決まりを考えた日本の或る一流企業が話題になった。中国が経済力をつけ、GDPで日本を抜き、世界第2位に躍り出たのも英語が使え、ビジネスチャンスを物にしてきた国家体制の恩恵が大きいようだ。そう考えれば、英語だけは文系・理系に関係なく必須なのも頷ける。自分の教養は自分で磨くしかない。人が何かをお膳立してくれるのを待っていては何も始まらない。指示待ちではなく、一に勉強、二に勉強。「面倒くさい」とか「そんな暇ない」と高を括って後々痛い目に遭わないよう、あなたも今から何かを始めてませんか。
私は45歳になってようやく自分の勉強不足に気づき、それで始めたのが、この通信制での勉強なのである。それが原因で大好きな釣りは疎遠になったが、将来の礎になればと思い、清水の舞台から飛び降りる覚悟で始めたことに後悔はしていない。今後も紆余曲折があり、精神的に追い込まれる事もあるだろうが、挫けず勇猛邁進して行きたいと考えている。
関連ブログ「女子大はなぜ今人気がないのか」
http://tsuri-ten.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/post-3654.html
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ブロガーさんと同世代の者ですが、「私大入試ランキング今昔物語」を興味深く拝読させて頂きました。
1985年、2010年の大学ランキング比較表の件ですが、一部気になる点がありました。も1985年受験組でしたが、当時の大学ランキングは下記のように記憶しておりますが‥。
・法政 SS57~59
・二松学舎、神奈川 SS53~56
特に当時の法政大学は偏差値上では中堅扱いで、他マーチに比べて圧倒的に格下感が強かったです。
Pさん、コメントありがとうございます。確かに当時はそんな印象は強かったですね。あの頃は受験戦争と呼ばれた時代ですので、偏差値によるランキングが主流で、おそらくは様々なランキング表が出版されていました。私が今でも所持しているライオン社のものでは、記載したようなランキングでした。この25年の間に少子化が進み、今や選ばなければ大学には行ける「全入時代」です。苦労して受験勉強していた時代は何だったのか。それに私大では、信じられないくらい一部の大学を除いて下がっています。マーチクラスもそうだし、女子大もガタ落ち、日東駒専、それに大東亜帝国も・・・。今、大学は過当競争で生き残りが大変です。
もしよろしかったら、3年前のものですが、「女子大はなぜ今人気がないのか」という記事もご覧下さい。(SUZU)
http://tsuri-ten.cocolog-nifty.com/blog/2010/12/post-3654.html
投稿: P | 2013年7月 1日 (月) 00時40分