巨人移籍でダメになる選手たち
今回のテーマは、タイトルが物語るように、巨人軍に入団・移籍したばかりにダメになった選手たち、あるいは成績がガタ落ちした選手を取り上げることにする。ON時代から熱烈なるジャイアンツファンの私にとって、できればこの話題には触れたくなかった。でもペナントレースで困窮を極める巨人の戦いぶりに「喝!」を入れる意味で、敢えて掲載したい。これまで巨人に移籍した主な代表選手は以下の通りである。
金田、別所、シピン、張本、松原、中尾、加藤英司、蓑田、阿波野、屋敷、清原、広沢、マルチネス、ペタジーニ、石井浩郎、ローズ、江藤、工藤、前田、李、豊田、谷、木村拓、シコースキー、グライシンガー、クルーン、マイケル中村、小林雅、藤井など
彼等は、他球団で主力(4番バッターやエース級)として活躍し、何らかの手段(FA・トレード等)で巨人に移籍して来た選手達である。彼等は一様に、前球団での成績の方が遥かに良く、華々しい活躍をした選手達である。彼等の個別の成績を移籍前と移籍後という条件で比較してみれば一目瞭然だろう。引退した選手は通算成績比較。現役選手は移籍前年とまだシーズン途中ではあるが、今年の成績を比較して検証した。
前球団 移籍前成績 巨人移籍後の成績
金田正一 国鉄 353勝267敗 47勝 31敗
別所毅彦 南海 89勝 76敗 221勝102敗
シピン 大洋 822安打166本塁打467打点 302安打52本塁打158打点
張本勲 日本ハム 2263安打338本塁打1396打点 526安打75本塁打280打点
前球団 移籍前成績 巨人移籍後の成績
松原 誠 大洋 2,081安打330本塁打1,172打点 14安打 1本塁打 8打点
中尾孝義 中日 596安打 95本塁打 280打点 103安打 14本塁打 55打点
加藤英司 阪急 2032安打 344本塁打1246打点 23安打 3本塁打 13打点
蓑田浩二 阪急 1211安打195本塁打656打点 75安打 9本塁打 22打点
前球団 移籍前成績 巨人移籍後の成績
阿波野秀幸 近鉄 67勝56敗4S 850奪三振 0勝3敗0S 39奪三振
清原和博 西武 1362安打394本塁打954打点 720安打131本塁打576打点
広沢克己 ヤクルト 1440安打250本塁打807打点 296安打 56本塁打178打点
石井浩郎 近鉄 778安打146本塁打463打点 116安打 16本塁打 73打点
マルチネス 西武 288安打 61本塁打203打点 209安打43本塁打147打点
前球団 移籍前成績 巨人移籍後の成績
工藤公康 西武・ダイエー 162勝89敗3S2,021奪三振 53勝40敗0S732奪三振
江藤 智 広島 1,014安打278本塁打670打点 465安打101本塁打296打点
屋敷 要 横浜 1136安打 57本塁打 370打点 10安打 1本塁打 5打点
前田幸長 ロッテ・中日 65勝102敗5S1,023奪三振 11勝8敗4S 218奪三振
前球団 移籍前成績 巨人移籍後の成績
ペタジーニ ヤクルト 595安打160本塁打429打点 218安打63本塁打165打点
ローズ 近鉄 1551安打392本塁打1100打点 241安打72本塁打169打点
小久保裕紀 ダイエー 1380安打233本塁打916打点 371安打94本塁打238打点
李承燁 ロッテ 打率.260 本塁打30 打点82 打率.167 本塁打5 打点11
前球団 移籍前成績 巨人移籍後の成績
グライシンガーヤクルト 16勝8敗 防御率2.84 0勝1敗 防御率4.90
クルーン 横浜 3勝1敗31S 防御率2.76 3勝2敗19S 防御率4.31
豊田清 西武 3勝1敗19S 防御率3.97 1勝1敗0S 防御率4.39
ゴンザレス ヤクルト 1勝5敗 防御率4.30 4勝10敗 防御率5.75
前球団 移籍前成績 巨人移籍後の成績
マイケル中村 日本ハム 2勝2敗28S 防御率2.14 1勝0敗1S 防御率1.68
小林雅英 ロッテ 2勝7敗27S 防御率3.61 0勝0敗1S 防御率 5.14
藤井秀悟 日本ハム 7勝5敗 防御率3.53 6勝5敗 防御率4.29
明らかにどの選手も移籍前の方が活躍しているのがわかる。特にひどいのはマルチネスとペタジーニ、そして韓国の英雄・李承燁。移籍前では華々しい実績を挙げて鳴り物入りで巨人に来たのに、全くの期待はずれ。これでは給料泥棒と同じだ。巨人に来た途端、成績がガタ落ちとなるし、選手生命が短くなる。理由は簡単。他チームでは一線級でバリバリ働いた主力選手だったのが、巨人に来る時にはピークを過ぎた35歳前後からであり、体力も気力も衰え(萎え)ているからなのだ。怪我や故障も必然的に多くなる。つまり早い話、引退間近な選手が有終の美を飾る最後のご奉公やご褒美として「終の棲家」が巨人という図式なのだ。そして外国人助っ人に関しては、金に物を言わせ、莫大な契約金を用意し、辺り構わずあるいは手当たり次第に引きぬく傾向があることから、選手自身も生活が保証されることに甘んじてハングリー精神を失い、気持ち的に守りに入る傾向が強くなるのだ。結果を出す前に期待料として多額の金額を提示されてしまえば、安心すること然りでやる気が出ないのは当然。こういう場合は完全歩合制にするべきなのだ。例えば安打一本に付き幾ら。投手だったら一勝につき幾らという具合だ。すると言い訳は出来ず、結果が収入のすべてを占めることになる。プロ選手は、野球で身を立てているのだから、それは当然の生業なのだ。新人選手もそうだ。プロとしては未知数の段階で、契約金1億円は与え過ぎ。「夢を売る職業」としての位置付けなのかもしれないが、プロとして通用するかどうかも先行き不透明な18歳くらいの高卒ルーキーにそんな大金を叩いてどうするのか?
また、巨人は毎年優勝を強く期待されることから、すぐに実践で使える即戦力候補が求められるため、FAやトレードで他チームの有力選手を引き抜いて補強する手法を取って来た。現戦力を見ても、小笠原・ラミレス・谷・古城などはいわゆる外人部隊で、彼等は額面以上の活躍を見せているが、それ以外の者はあまり活躍の場すら与えて貰えず、また、せっかくレギュラーを勝ち取っても、翌年には熾烈なポジション争いで控えに回るというケースも数多い。そして環境の変化に順応できない選手が多い。各対戦相手がセリーグとパリーグではクセや好みなどがガラリ異なり、選手一人一人に対して一から研究・分析し直さなければならないから、いくら移籍前の球団で華々しい活躍をしても、移籍後は以前と同じ成績を上げられるかというと一概にそうとは言えないのだ。しかも、巨人が相手だと、他チームの気合の入り方が違う。特に阪神戦では、エース級をあえてぶつけ、絶対に取りこぼせない覚悟と勢いを感じる。そしてかつては露骨にも巨人戦しか野球中継が行われなかった時期があった。だから全国の野球ファンの前で無様なプレーは見せられないというのが強かった。故に気合の入れ方がまるで異なり、巨人を目の敵にする傾向が強かった。従って、巨人に身を売った外国人などは意地でもやっつけてやりたいという闘志は強くなるのは当然だろう。
また、巨人軍は新人選手を育てるのが昔から下手。ドラフトで鳴り物入りで新加入しながら、日の目を浴びず、鳴かず飛ばずで終わってしまった大物ルーキーも多い。藤城、大森、上田、辻内、太田も結果が出せない人達だ。生え抜きで何とかやっているのは高橋由伸、亀井、鈴木、阿部、脇谷、坂本、越智くらいのもの。本当に強い巨人愛を貫くのであれば、若手選手を育て上げ、一から鍛えて貰いたい。気骨な精神力なくして寄せ集めだけのチーム力ではベクトルもバラバラで、優勝は到底狙えないと思う。すぐに結果(優勝)を求めてしまうファンも悪いのだが、かつての広島のように地道な育成プランニングが求められているのかもしれない。
一方、巨人を追われた選手は、球界の盟主から追放される訳で、どうしても「都落ち」という意識を強く抱く。そして「いつか巨人を見返してやろう」とリベンジを固く誓い、新天地ではかなり好成績を上げている。古くは広島の萩原、韓国プロ野球に新境地を求めた新浦、阪神へトレードされ、翌年20勝を挙げて、対巨人戦は負けなしだった小林繁、横浜で2,000本安打を達成した駒田、西武でも守護神として活躍した鹿取、近鉄でクリーンアップを打った吉岡、同じく石毛博史、日本ハムへ出された二岡と林、今年の木佐貫(オリックス)など。巨人では控えなどで出番を与えられなかった面々だが、他球団で活躍できる機会が増え、水を得た魚のようにその才能を開花させている。巨人にとっては皮肉とも言えるような結果である。
今、プロ野球はセ・パ両リーグ共に日替わり首位とも言うべき状況で、見ていては面白いだろうが、巨人は明らかに投手不足。楽天から朝井を連れて来てローテーションを任せるも、出だしは良かったが、毎回大量失点の中に埋没してしまっている。今回のテーマを問題意識として、この現状打破に向け、今こそ大改革が求められるような気がする。プロ野球中継がBSでしか放送されなくなった不人気の中、復権を果たすには強い巨人が切望されるのだ。ぜひ、プロ野球に再び灯りをともしてほしいものだ。
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全くおっしゃるとおりですね。
今日クライマックス2位が確定しそうな状況で最後の試合を落とし、ずるずると負けてしまいました。
最後の公式戦というわけでベンチ野手を代えまくる総力戦でしたが、主力を引っ込めたヤクルトに勝てませんでした。
いくらベンチの選手層が豪華で厚くても肝心なたった1試合を「物にする力」とはならなかった様です。
ーおっちぃさん、初めまして。コメントありがとうございます。大好きな巨人で毎年応援しているだけに、今年の戦い方はちぐはぐなものでした。今日のブログにも思わず書いてしまいましたが。V9当時の巨人が圧倒的に強かったのは、打順ごとに役割分担がはっきりしていたことと、あの当時ですら勝利の方程式を実践していたことでしょう。最高指揮官の誉高かった原監督の下、昨年のV3で当分安泰だと思っていましたが、尾花コーチが退団したことで投手陣は火の車で崩壊。辻内や太田などの若手が育たずに高橋由や谷などのベテラン頼み。合格点は二冠確定的なラミレスと捕手で44本もホームランを放った阿部くらいでしょう。今日の敗戦で甲子園でのCS開催。あの大応援団の前で巨人はプレッシャーの中の闘いを強いられることからたぶん2ndステージへの進出は厳しいものとなりました。あとは開き直ってやるしかないでしょうね。また何かあったらコメントよろしくお願いします。(SUZU)
投稿: おっちぃ | 2010年10月 8日 (金) 22時26分