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2010年12月 2日 (木)

女子大はなぜ今人気がないのか

 昭和の頃、「○○戦争」と呼ばれた時代があった。例えば政治の世界では角福戦争、交通事故が急増した時代には交通戦争、そして私が直接関わったことが受験戦争であった。とりわけ第一次・第二次ベビーブームや高度経済成長の折りには、大学進学率は僅か20%未満であり、私が受験生だった昭和58年頃は、4年制大学で22%、短大が11%程度だった。しかし、もっとも大学の数自体が今より俄然少ない状況にあり、大学まで進んで学問を追究する人というのは、経済的にゆとりのある家庭くらいなもので、それも5人にひとり程度だった。それが昭和40年代の国家戦略が軌道に乗った結果の経済成長と共に、学力志向や学歴偏重の社会となり、勉強は詰め込み式へと変わり、英語は文法訳読中心の暗記型学習に終始していた。その象徴的な事例が「赤尾の豆単」で、受験生を中心にバカ売れして毎年ベストセラーとなり、旺文社のラジオ講座(通称ラ講)も大人気だった。NHKラジオの英会話や「百万人の英語」もかなりモテ囃された頃のことであり、文学青年が幅を利かせていた時代でもあった。その後、バブル景気に向け経済発展するにつれ、大学進学率が飛躍的に伸びた。

 文科省の学校基本調査によれば、1994年(平成6年)には全国の4年制大学への進学率が初めて30%を突破し、短大及び専修学校を含めた上級学校への進学率は52%に達した。つまり、中卒や高卒の数が初めて50%を割り込んだのもこの時期であった。ちなみに最新のDATAでは、2009年時点での4年制大学への進学率は、驚くなかれ全入時代を反映して、50.2%にも達している。つまり2人に1人は4年制大学へ進学していることになる。それでも驚いては行けない。ところ変われば品変わるで、お隣り韓国の大学進学率は、何と90%である。その過熱ぶりは半端ではなく、受験に遅れそうな学生は白バイが先導したり、パトカーで試験会場まで送り届けることもあるという。先進国の日本では、まだまだ専門教育や高等教育を受ける割合は決して高いとは言い切れない。

 しかし、進学率が高くなってきている一方で、短大の人気がガタ落ちした。2009年度ベースで見れば、6%に留まっている。つまり、進学を志している100人で僅か6人足らず。短大のステータスが落ちた背景には、就職率が極端に悪いこと、2年間の専門教育では知識や教養のスキルアップがままならないこと、そしてジェンダーフリーが進み、男女雇用機会均等となっていること、更には男女共学が一般化した今、誰も好んで周りに女性しかいないような短大に進学する学生はいないことなどが挙げられる。実際問題として、2年目から就職活動に専念しなければならない現状では、本格的に専門教育に身を投じることが出来るのは、実質1年未満である。これでは期待していた学力が身につかないのは当然だろう。そしてもうひとつ、同じ理由だが、女子大の人気の低迷振りは20年前とは雲泥の差である。その理由は、自民党政府が打ち出した規制緩和や各種官営事業の民営化や自由化にあった。それに乗じて、生涯学習という観点も注目を浴びるようになり、むやみやたらに私立大学を中心に、大学の新設や学部学科の増設、あるいは定員を増やし、狭き門が全入時代と呼ばれるほど広き門へと変わったことによる。数年後には少子化で受験生が激減し、経営が立ち行かなくなることは火を見るより明らかで、それを重々予想し得た筈なのに、今になって、定員割れを起こし、財政難で経営危機に陥っている大学が決して少なくない。特に、私立大学の急落振りは目を覆うばかりである。最もその煽りを受けたのが女子大学で、その不人気傾向は顕著である。かつての有名女子大学も決してその例に漏れず、厳しい経営状態を強いられている。

Tsudajyuku

 では論より証拠、私が受験生だった1983年(昭和58年)と2009年(平成21年)の有名女子大の難易度の変化を見てみよう。参考としたのは、現に今も私が所有しているライオン社の27年前の私立大学ランキング表(冊子)と、2009年のDATAについては、老舗受験情報会社「ベネッセコーポレーション」と東進予備校のHPの難易度DATAである。なお学部学科は、女子に人気の文学部で比較したい。(私立は東日本の大学のみ掲載・ただし学科によっては差異があること、予備校各社によって偏差値が変動することを予め付記しておく)

 <国公立の女子大>
             1983年偏差値 → 2009年偏差値
 お茶の水女子大学    67          64
 奈良女子大学        63           58

 <私立の女子大>
             1983年偏差値 → 2009年偏差値
 津田塾大学        65          62
 日本女子大学       63          60
 東京女子大学       62          57
 聖心女子大学       60          57             
 清泉女子大学       59          51
 藤女子大学         57           51 
 フェリス女学院      57          49 
  白百合女子大学     55          50
 大妻女子大学       54          50
 昭和女子大学       53          50
 共立女子大学       52          47
 実践女子大学       51          42

Tokyogirls_school Nihon_girls     

 これ以外にも、武蔵野女子大学や洗足学園大学などがあるが、前者は男女共学の武蔵野大学となり、洗足は音楽系の専門大学と言う位置づけから、今回は掲載しないでおきたい。
 ランキング表はコチラ→ http://www.toshin.com/univ/search_dev.php             

 それにしても「ここまで来たか」という落ち込み振りである。もちろん志願者が激減してのこの有様のようだ。かつてはお嬢様学校としてならし、良妻賢母を養成したり、才色兼備のキャリアウーマンコース、そして何よりコンパでは大モテだったのが今では夢のようで、中には存続すら危うそうな女子大まである。栄枯盛衰、昔の面影はどこへやらである。逆に受験生の立場から見れば、以前と比べても断然入りやすくなったと言える。以前なら合格できなかった有名女子大や短大も決して狭き門ではなくなったということだ。では、女子大不人気の現状を鑑みて、そうなってしまった原因を冒頭で検証したが、私なりの打開策を提唱したい。もし女子大学の関係者がいたら、ぜひ読んでほしい内容である。もしかすると短所を長所に換える逆転の発想で、志願者を大幅に改善できる秘策が見つかるかもしれない。

 打開策1
 昔のネームバリューはもはや通用しない。過去の栄光をかなぐり捨て、発想の転換を図るべし。少子化のこの時代、他力本願を期待したり、待ちの姿勢では受験生は集まらない。中堅の「日東駒専」クラスでさえ、受験者数は減って来ている。ここはひとつ攻めの姿勢で、根気強く、高校訪問を実施するなど、とにかく足で稼ぐべし。

 打開策2
 よさげな高校をピックアップし、無料の出張講座でどんどん高校側にPRすべし。

 打開策3
 つまらないプライドは捨て、指定校推薦の枠を広げ、門戸を開放すべし。

 打開策4
 今、人気のある学科は医療技術(理学療法・作業療法・臨床検査技師)系や看護、食物栄養、心理学科である。志願者が少ない学科は募集停止にするなり、思い切った舵を切り、つぶしが利く学科編成ではなく、職業に直結した専門色を濃く打ち出すべし。

 打開策5
 教育学部や教員養成系はもはや危機的状況。教育改革でいつ6年制(その指針は11月下旬に公表されたが)になるかわからない。薬学部の二の舞にならないために、早目に手を打つべし。今は少子化で、教員の募集が少ない。正式採用で教師になるのは並み大抵のことではない。

 打開策6
 これからは大学院の時代。大学と大学院の連携で、進学しやすい条件整備を遂行すべし。その方策を新たに模索せよ。仕掛けは早い方が良い。

 打開策7
 理科離れに歯止めをかけるべく何らかの手立てを打ち出すべし。理工系は昔から女子に不人気。理由は理数科を苦手とする女子が多いため。この世の中、技術職である理系が優先的に就職が決まっていく現状を再認識せよ。大学単位で出来る取り組みはあるはず。他にはない魅力は何か?独自色や個性を強く主張するべし。

 打開策8
 女子学生は、基本的に楽しみながら学べる環境を求めやすい性質があることを念頭に置き、魅力溢れる学校づくり、あるいは学科再編を断行すべし。具体的には体験型学習やキャリア教育を充実させる。

 打開策9
 就職担当者は、学生の自主性に任せるのではなく、より親身なアドバイスを行うべし。特に女子短大の場合、門前払いとなるケースも多い。したがって、学生課や就職担当者は足繁く企業訪問を行い、礼を尽くし付き合いを良くしておくべし。

 打開策10
 男女雇用機会均等法が施行され、一見は男女格差がないように見えるが、女子生徒の内定率が低い状況に着眼し、職種によっては明らかに男子学生を欲しがっているのが企業によっては見え透いている。そうした内情をいち早く察知し、或る程度女子向きの職種に絞った企業訪問なり、合同面接会でのPR、入社試験の選定を行うべし。ダメもとや博打感覚での就職活動は失敗の元凶。その傾向を排除し、過去のデータを活用すべし。また、女性管理職を多く登用している会社は見込みあり。

 以上が大学関係者に知ってほしい「十戒」である。しかし、一番大事なのは、生き残ることを念頭に置き、危機感や問題意識を常に持ち続け、「どうすればもっとよくなるか」を想定した具体策を講じて行くことにある。そして「良いと思う」ことはすぐに計画を立てて行動に移す、その実践力が最後は物を言うのだ。いずれ経済状況が回復すれば人気も戻るなどと高を食っていると、そのままズルズル志願者は減少の一途を辿り、取り返しがつかない事態を招くかもしれない。手を打つには早いことに越したことはない。

 最後に、追加記事となるが、11月29日(月)に「日本経済新聞」に掲載されていた「大学イメージランキング」で、学生が志望校を選んだ理由も載っていたのでそれを紹介して結びとしたい。大学関係者はぜひ参考にされたし。学生の本音から何か突破口が見出せるかも知れない。

 第1位 学びたい内容を学べる 16.8%
 第2位 カリキュラム・教育制度が充実している 10.0%
 第3位 希望の資格が取れる 7.8%
 第4位 充実した学生生活を送る 6.6%
 第4位 立地・アクセスが良い 6.6%
 第6位 就職状況や就職実績が良い 6.2%
 第7位 入試方法・科目が合っている 6.1%
 第8位 校風・学生の雰囲気が合っている 6.0%
 第9位 キャンパスの施設・設備 4.7%
第10位 教員・スタッフが魅力的 4.3%
第11位 就職・進路支援などのサポート体制が整っている 4.2%
第12位 偏差値が合っている 3.3%
第13位 学費・奨学金制度がある 3.0%
第14位 クラブ・サークル活動が盛ん 2.4%
第15位 有名な卒業生・在校生がいる 2.0%
第16位 留学制度や研修制度が充実している 1.6%
第17位 インターンシップ制度がある 1.1%
第18位 他校との交流が盛ん 0.9%

 こうした学生の本質や希望を鑑みて大学としてのアドミッションポリシーを提示する必要があろう。今の学生は、全入時代を反映してあまり欲がない若者が多い。無理して頑張って難しい大学へという観念は少なく、自分の実力に見合った、つまりは身の丈ほどの学校を選ぶようだ。そして、意外とシビアなのが、かつての一流大学としてのネームバリューではなく、中身で選んでいることがよくわかる。そして一番の進学の障害は、経済的理由である。大学に進学したくても、そういった事情で断念したり、やむを得ず就職に切り替えたりするケースが後を絶たない。よって私学は、特に巨額な学費がかかるため、奨学金に依存したり費用の安い大学(授業料免除など)を選ぶ傾向があるようだ。この辺りも戦略として大いに参考にして欲しいところである。

 記事作成:11/26(金)

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