感動のラストラン
今日は、アクセスいただいた方々に筋書きのない感動ストーリーをお届けしたいと思う。それは、華々しく脚光を浴び、一世を風靡した時代を過ごした者たちも、いつかは引退する時が訪れる。時代の寵児として君臨し、世の中を席巻した時期の姿を目に焼き付け、記憶の中にしかと刻み込んでおきたいがために、ここに掲載するものである。
オグリキャップの場合
ハイセイコー、テンポイント、ミスターシービー、トウカイテイオーなどファンに愛されたサラブレッドは数多く存在する。名馬たちとの出会いは心を揺さぶり、そして鬣も勇ましく振り乱して疾走する姿は圧巻。騎手の駆け引き、どこで仕掛け、どこで鞭を入れるのか。そして最後の直線でありったけの力を振り絞って力走する姿は感動を呼び、大観衆の大きな声援が包み込む。筋書きのないドラマに人は酔いしれる。
そんな名馬たちが織り成す感動ドラマだが、私は「日本一のサラブレッド誰か?」と聞かれたら間違いなく「オグリキャップ」と答えるだろう。彼のラストランは今でも伝説として語り継がれている。
1990年、オグリキャップはたび重なる脚部不安に苛まれ、秋の天皇賞、ジャパンカップと惨敗を喫す。「オグリは終わった」、そんな風評も聞こえてくるなか、彼は4番人気で生涯最後のゲートに赴いた。第35回有馬記念。多くのファンが逡巡のはてに、オグリという名の夢に賭けた。朽葉色のターフに燃え盛る“炎”。絶望の淵から、オグリキャップは甦った。スーパーヒーローのラストランは、劇的な勝利で幕を下ろしたのだった。
爆発的なオグリブームは、奇しくもバブル最盛期と一致する。うたかたの時に生きたオグリキャップは、ひたすら走り抜くことで私たちの胸を熱くした。白い炎の記憶は、不滅の真実として、競馬史に刻まれている。
ディープインパクトの場合
2006年12月24日、引退レースとなる有馬記念に出走した。レースでは道中後方3番手につけ、3コーナーから追い出して直線で早々と先頭に立つと、最後は流しながらも2着ポップロックに3馬身の差をつける圧勝で、有終の美を飾った。武豊が「生涯最高のレースができた」「今までにないくらい、強烈な『飛び』だった」と言うほどのレース内容だった。また、このレースでシンボリルドルフやテイエムオペラオーに並ぶ史上3頭目の中央競馬GI7勝の最多タイ記録を達成し、獲得賞金ランキングでもテイエムオペラオーに次ぐ単独2位にランクインした。
南武線205系ナハ39の場合
2015年12月6日、南武線205系ナハ39編成がラストランを迎えました。今回、
武蔵小杉駅発車後に感動的な車内放送が流れました。
「ただ今ご乗車いただいておりますこの車両は、本日をもちまして南武線の営業運転から引退し、今後はインドネシア・ジャカルタに渡り、走り続けることとなります。まもなく終点の武蔵中原です。電車をお降りの際は、お忘れ物のございませんように、また、この電車との思い出もお持ち帰り頂けたら幸いでございます」。
武蔵中原駅
ナハ39編成、約30年間、日本での活躍お疲れさまでした。(Youtubeの原文のまま掲載)
この動画では、感謝を伝える車掌の心温まるアナウンスと共に、去りゆくものへの悲哀と、人々の愛着と思いれの深さを実感した。是非、ジャカルタでも現地の人の生活を支え、末永く愛される車両であってほしいと思います。
箱根駅伝最終走者の場合
小さい頃からの陸上アスリートの夢、それは「箱根駅伝」。大学の4年間にだけ与えられた夢舞台。その檜舞台を夢見て、ひたすら苦しい練習に耐え、仲間と励まし合い、支え合いながら頑張って来た。チームメイトを信じ、汗と涙が染込んだ母校のタスキに誇りを感じ、ランナーはひたすら箱根路を駆け抜けた。その夢と希望を実現させてくれた舞台から去る時、何を感じ、そして私たちに何を残すろだろう。一生懸命に走り続ける姿に、私たちは心からの声援を送り、そして感動を覚える。そして、そうした真摯な姿を見て、視聴者は励まされ、明日への糧を得る。それこそが箱根駅伝だと思う。
さて、今日は年末年始を控え、この時期に行われたイベントで、過去に私たちを感動の渦に巻き込んだ名勝負や想い出の一コマを切り取り、永遠に忘れないために掲載したかった。有馬記念、箱根駅伝、それを最後に引退をする運命の者たち。私たちはその生きざまが真実のドラマである限り、一緒に応援したいと思う。それが頑張ったことの証になり、賞賛すべき唯一の手段だと考えるからだ。今年はどんな筋書きのない感動ドラマが私たちを待ち構えているのだろうか。そのかけがえのない歴史の目撃者となることを今から楽しみにしたい。
記事作成:12月11日(金)
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