欲しがり巨人の末路
巨人ほど気の毒で残念な球団はないだろう。優勝を期待されながら、今年はBクラスに転落し、多くのファンを裏切った。それが災いしてか、シーズン終了と共に多くの選手が戦力外通告を受け、片岡や松本哲など、まだやれる選手でさえ引退を余儀なくされた。そうした切り捨ての風潮が昔から巨人にはあった。そして他球団の主力を引き抜く工作も健在のようで、古くは金田、別所、張本、松原など、投手はエース級、打者は4番クラスをトレードなどで峠を越えた頃合いを見て入団させ、最後のひと花を咲かせて花道を飾ってあげるという構図だった。
FA制度導入の今では信じられないが、他球団の主力を何人引き抜いて巨人に入団させた実例を取り上げたい。たぶん金に物言わせた「なりふり構わぬ体質」が明るみになるだろう。そして巨人在籍時の成績と、他球団での成績を比較し、巨人に来るとその起用法が悪くてすぐにダメになることを例証したい。
<投 手>
1 金田正一(国鉄の大エース)
巨人以前の成績 15年 353勝 267敗 勝率.569
巨人での成績 5年 47勝 31敗 勝率.602
巨人では晩年の5年間だが、平均9勝程度、しかし国鉄時代はシーズン平均23勝以上を記録している。
2 別所毅彦(南海のエース)
巨人以前の成績 5年 89勝 66敗 勝率.574
巨人での成績 12年 221勝 112敗 勝率.663
これも南海のエースだった別所を強引に引き抜き入団させた。
3 阿波野秀幸(近鉄のエース)
巨人以外の成績 11年 75勝 65敗 勝率.535
巨人での成績 3年 0勝 3敗 勝率.000
4 川口和久(広島のエース)
巨人以前の成績 14年 131勝 122敗 勝率.517
巨人での成績 4年 8勝 13敗 勝率.380
5 工藤公康(ダイエーのエース)
巨人以外の成績 22年 171勝 102敗 勝率.626
巨人での成績 7年 53勝 40敗 勝率.569
6 豊田 清(西武のリリーフエース)
巨人以外の成績 12年 57勝 36敗 10ホールド 135セーブ 勝率.612
巨人での成績 5年 9勝 14敗 22ホールド 22セーブ 勝率.391
7 杉内俊哉(ソフトバンクのエース)
巨人以前の成績 10年 103勝 55敗 勝率.651
巨人での成績 6年 39勝 22敗 勝率.639
投手は軒並み他球団のエース級(リリーフエース級)を獲得しているが、別所を除き、成績は下がっている。これは昔はFAがなく、トレードで峠を越えた頃に、長年の労苦に報いるために巨人で引退を飾る選手が多かったからだろう。FA導入後、巨人に来た選手は皆、移籍前のほうが断然成績が良い。何事にも注目される巨人のプレッシャーは相当のようだ。金髪茶髪はもちろん、髭もダメ。昔は巨人は外車(ベンツ)に乗れというお触れまであったという。紳士であれという私生活も管理され、選手は優等生にならざるを得ず、実力を発揮できないで終わってしまうケースが多い。
<打 者>
1 張本勲(日本ハムの主力)
巨人以前の成績 17年 2136試合 2435安打 414本塁打1341打点 率.319
巨人での成績 4年 444試合 526安打 75本塁打 280打点 率.326
巨人以後の成績 2年 172試合 124安打 15本塁打 55打点 率.242
2 松原 誠(大洋の4番)
巨人以前の成績 19年 2154試合 2081安打 330本塁打 1172打点 率.278
巨人での成績 1年 36試合 14安打 1本塁打 8打点 率.233
3 蓑田浩二(阪急の主力)
巨人以前の成績 12年 1273試合 1246安打 195本塁打 656打点 率.283
巨人での成績 3年 147試合 40安打 9本塁打 22打点 率.230
4 落合博満(中日の4番)
巨人以外の成績 17年1884試合 2009安打 457本塁打 1345打点 率.313
巨人での成績 3年 352試合 362安打 53本塁打 219打点 率.296
5 清原和博(西武の4番)
巨人以外の成績 13年 1452試合 1402安打 318本塁打 954打点 率.305
巨人での成績 9年 886試合 720安打 207本塁打 576打点 率.223
6 石井浩郎(近鉄の4番)
巨人以外の成績 10年 784試合 778安打 146本塁打 463打点 率.292
巨人での成績 3年 190試合 116安打 16本塁打 73打点 率.271
7 広澤克己(実)(ヤクルト・阪神の4番)
巨人以外の成績 14年 1509試合 1442安打 250本塁打 807打点 率.278
巨人での成績 5年 384試合 294安打 56本塁打 178打点 率.257
8 ペタジーニ(ヤクルトのホームラン王)
巨人以外の成績 5年 620試合 664安打 170本塁打 470打点 率.313
巨人での成績 2年 217試合 218安打 63本塁打 165打点 率.305
9 イ・スンヨプ(ロッテの主力)
巨人以外の成績 3年 339試合 265安打 59本塁打 183打点 率.233
巨人での成績 5年 458試合 421安打 100本塁打 256打点 率.274
10 江藤 智(広島の4番)
巨人以外の成績 14年 1207試合 1094安打 263本塁打 724打点 率.273
巨人での成績 6年 627試合 465安打 101本塁打 296打点 率.256
11 ローズ(近鉄のホームラン王)
巨人以前の成績 11年 1439試合 1551安打 392本塁打 1100打点 率.288
巨人での成績 2年 235試合 241安打 72本塁打 169打点 率.267
12 マルチネス(西武の4番)
巨人以前の成績 2年 263試合 288安打 61本塁打 203打点 率.294
巨人での成績 3年 275試合 209安打 43本塁打 147打点 率.291
13 ラミレス(ヤクルトの4番)
巨人以外の成績 9年 1175試合 1351安打 232本塁打 842打点 率.297
巨人での成績 4年 569試合 666安打 148本塁打 430打点 率.307
14 小久保裕紀(ソフトバンクの4番)
巨人以外の成績 15年 1702試合 1670安打 319本塁打 1066打点 率.270
巨人での成績 3年 355試合 371安打 94本塁打 238打点 率.286
15 小笠原道太(日本ハムの主力)
巨人以外の成績 12年 1291試合 1375安打 240本塁打 756打点 率.319
巨人での成績 7年 701試合 745安打 138本塁打 413打点 率.295
16 村田修一(横浜の4番)H29まで
巨人以外の成績 9年 1158試合 1100安打 251本塁打 732打点 率.266
巨人での成績 6年 795試合 765安打 109本塁打 391打点 率.273
他球団から巨人に招聘されても、成績はガタ落ちするのが通例のようで、人気球団だけを有り難がって来ても、満足な成績は収めていない。皆、常勝のプレッシャーに負けていることが明らかだ。切り捨て球団の典型で、若手を上手く育てられない球団の体質がすべてを物語っている。プロ野球選手として大成したかったら、巨人以外のチームに入った方が選手寿命は長そうだ。飼い殺しに遭い、出番なくシーズンを棒に振るのがオチだからだ。清宮と安田はパ・リーグに入団するので伸びるだろうし、中村も地元の選手育成に定評のある広島なので、大きく育つのは間違いない。
最後に、3年連続でV逸した巨人のシーズンオフの粛清が止まらない。すでに現役引退、自由契約、戦力外通告などで、今季、保有していた選手23人の、実質上クビ切りを断行した。残れた選手も恐々としているに違いない。勝負の世界なのだから、結果が出なければ解雇も仕方ない世界。しかし、巨人ほど使い捨て、飼い殺し、育成下手な球団はない。一シーズンで23人の大量クビ切りなど聞いたことがない。自らの育成下手の体質を逆手にとり、これみよがしに解雇通告とは・・・。血も涙もないし、本末転倒の大粛清だろう。
しかも解せないのは、バッティングは酷いが地肩が強い小林と、今年芽が出てきた宇佐美という二枚捕手がいるにもかかわらず、10月のドラフトでは捕手ばかり3人を獲得した。まったくもって意味不明。2人を潰す腹か?やる気を殺ぐ補強だ。
さて、これまで過去、江川、元木、長野、菅野など巨人一筋で浪人生活を送った選手もいた人気球団だったが、今となってはFA導入もあって、巨人のステータスは薄く、もはや魅力ゼロだろう。入団した後、実力があってもアピールする機会は与えられないし、捨て駒扱い。広島、日本ハム、西武などはどれほど選手を育てるのが上手いか・・・・。人気があっても実力を発揮できる出番がなければ元も子もない。育てる前に実力を見切ってクビを切られたら選手はひとたまりもない。こうした体質を続ければ、ファンの心はどんどん離れていく。今の巨人には魅力がない。他球団のエース級や4番打者を引っ張ってきて、ダメになればクズ同然に捨てる。これではもはや球界の盟主とは言えない。
地方の球団(福岡ソフトバンクや広島カープ、東北楽天、北海道日本ハム)などに人気を持っていかれるわけだ。新人選手はそうした球団に入ったほうが、大きく育つ。出番も無く飼い殺しになるより、実力を発揮できる。
ジャイアンツには他球団のそうした選手愛を見習ってほしいと思う。
記事作成:11月5日(日)~8日(水)
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